MAEKAWA
Architecture
KUMAMOTO
熊本の前川建築
熊本県に住むわたしが最初に意識した前川建築は勿論、熊本県立美術館本館(1976)と熊本県立劇場(1982)。どちらも、前川建築の「工法」が確立した円熟期・晩年期の作品で、壁も床もタイルでびっちり覆われた、大きくて荘厳な建物です。
熊本県が2つも、前川國男さんに公共建築の設計を依頼したのは、ときの県知事が埼玉県で前川國男さんの建築をみて、熊本にもあのような建物が欲しいと思ってのことだったそう。
前川事務所もその期待に十二分に応え、2作とも代表作となる完成度で創り上げてくださいました。
熊本県立美術館など、そのディテールで本が1冊出るぐらい手の込んだデザインが施されていて、その見方を知るのはとても楽しいことなのですが、建築学的なことは置いておいても、熊本県立劇場もどちらも、観る者を叩き伏せるような風格と迫力があります。
「ここ熊本ですけど、そんな強烈な存在感放ってもらっていいんですか?」
って言いたくなるような。あの時代だからこそ造れたであろう贅沢に使われた空間も、有難い限り。
どちらも築35年を越えましたが、施主である熊本県、前川事務所、施工業者の三者の緊密な連携の下、いい状態で維持管理がされています。
もちろん、前川事務所の工法が「100年使える建築」を標榜し、幾多のご苦労を重ねて確立されたもので、劣化が遅く管理が容易なことも、大きな利点だと拝察。
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全国の前川建築を観て回るようになり、ル・コルビュジェの日本人一番弟子だった前川國男さんが、コルビュジェのアトリエから帰国して間もなく、日本で最初のモダニズム建築となる「木村産業研究所(1934)」を設計して以来、鉄筋コンクリート造の工法もままならない中から試行錯誤を重ねた過程の作品もどれも、そのときどきの本気が伝わる、かっこいい建物ばかり。
前川建築の好きなところ、何とかまとめるとしたら、
「使う人のこと、その土地に住む人のことを考え抜かれた建物だから」。
前川建築は比較的、解体を免れているものが多いことも、そのことを裏付けていると思います。
なお、一番好きな前川建築は、別のタグでも書きましたが、「旧前川國男邸」です。
究極の、使う人のことを考えた建築。
前川建築の好きなところはまた、折を見て語らせてください。
